コンサルタントコラム 2025/1/26

パチンコ業界 2024年M&A振り返り(1)

シニアコンサルタント  奥野 倫充

2023年と2024年の成約事例比較

1.2024年は28件のパチンコM&Aが成立。2023年度のパチンコM&Aは約50件でしたので、それから成約件数を大幅に減らす傾向となったのが2024年のパチンコM&Aでした。その理由は、(買い手目線で)魅力的な売り案件が減っていること。加えて、買い手の立場ではM&A案件を選び易い状況が進行しているためです。パチンコ関連M&Aは、年々、買い手有利の状況が時流となっていますが、その時流に加えて、いよいよ「売り物になる良物件がない」という状況に突入してきたとも考えられます。

また、2024年度パチンコM&Aの特徴としては、いわゆる「法人としてのパチンコ事業からの完全撤退」が半数以上を占めました。2023年度は、いわゆる防衛買い(競合法人の出店阻止も兼ねて近隣店舗をM&Aで取得する)が目立ちましたが、その傾向が一変しております。今までは、いわゆる店舗譲渡が主。しかし、2024年を境にパチンコM&Aは法人譲渡が主流になる。そんな潮目を感じさせたのが2024年度パチンコM&Aの実績です。

2.「叩き売り」より「業績アップ」で時期を待つのも一案

店舗譲渡から法人譲渡に潮目が変わったといえども、買い手有利の状況は加速してます。M&A成立を目指すならば、売り手様は、納得できない譲渡対価で叩き売ることを承諾することも必要。パチンコ事業から卒業できたことを良しとするという割り切りが要る状況と思います。ただ、売り手様の本音ではこの心境を受容するのは辛い。ので、現時点では、既存店の再投資をしながら、力相応に業績アップを模索するのが最も有効と思います。もちろん、条件に合う買い手様とのご縁があれば全力を尽くされるべき。ただ「売らざるを得ない」とご自身を追い込まず「条件が合わないならば業績を伸ばす」という気持ちを強く持ち、売り手様はM&A成立を模索することが肝要と思います。

幸い、2023年に比べた2024年のパチンコ市場はいくらか市場拡大傾向が出ています。パチスロへの投資など、投資先を間違えなければ業績アップの果実を得られるのも事実です。2025年度はパチスロBT機の発売など、パチンコ業界としての新たな試みもあります。設備投資の高騰傾向や、資金調達が困難となっている状況など、パチンコ業界全体の閉塞感が目立ちますが、ただ、その閉塞感を打開するような取り組みも少しずつ出てきそう。個人的には、コロナ禍を経験した皆様ならば、パチンコ業界全体を覆う閉塞感を打開するような状況を手繰り寄せれるとも思っております。

※続きは、次のコラムでお送りします※

 

パチンコ業界 2024年のM&A振り返り

 

担当者
シニアコンサルタント
奥野 倫充

信州大学卒業後、1996年に船井総合研究所に入社。1998年より、パチンコホールのコンサルティング支援に従事。ホール企業、メーカー、販社へのコンサルティング活動を展開中。コンサルティングのビジョンは、パチンコ業界の成長発展に貢献すること。著書は『マルハンはなぜ、トップ企業になったか?』『会社の業績を10倍にする番頭さんの仕事のルール』がある。プレイグラフにて『短期ホール立て直し術』を連載中。プレミアムメルマガを週に一回配信中。